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日常の変化って気付きにくい

自分の道具の「変化」を知ることの大切さ

みなさんは「自分のことは自分がいちばんよく知っている」と思っているかもしれませんが、はたしてどうでしょうか?
毎日、鏡の中に見ている自分の顔は、昨日の自分と、まったく同じように見えますよね。でも一週間前と比べてどうでしょう? 一カ月前と違いはないですか?

違い…… わからないんです。
日常的に接しているものや、連続的に使用しているものの変化って、人間は気が付きにくいものです。つねに接しているものですから、変化といったって「微妙」「微量」です。

右肩下がりの線グラフを思い浮かべてください。「つねに使っている」「連続使用」、これはグラフで「線」として表わされます。直前のポイントでは「とても小さな変化しかない」ですが、ずっと前と比べると「ものすごい量の変化」が生じていることがわかるでしょう。

テニス道具もこれとまったく同じですね。毎日、練習している人って「昨日と同じ感覚」が、ずーっと続きますから、「一昨日ともまったく違わない」と思ってしまい、「ずっと前から変わっていない」と思い込んでしまうんですね。

たとえば「ストリング」。
定期的に張り替えるようにしている方は「時期がきたら張り替える」と決めてらっしゃるわけで、何かが「きっかけ」というわけではありませんが、そうでない方は、何を契機に張り替えを思い立つのでしょう。

なんとなーく「飛ばなくなってきたなぁ」「ボールがイってないなぁ」と違和感を感じるようになってからでしょうか。何を「張り替え時機到来のバロメーター」にしたらいいかはっきりしていませんよね。

ここに、先に話した「連続して使っているものって変化がわかりにくい」というのが繋がってきます。何を契機に張り替えたらわからないところに、昨日との変化がわからないんですから、「ここだぁ!」って判断できないですよ。

そこにさらに「人間は、自分の感覚ほどアテにならない」という話が絡んできます。自分では「いい打球を打ててるつもり」でも、周りから観ていると「なんか調子悪そうだよね」ってことはあるものです。

だから、自分の感覚などアテにせず、他人に観てもらうことです。いつもラリーしてくれている相手なら、「僕のボール、どう? イってる?」って訊いてみましょう。あるいはパートナーやコーチに、ちょっと離れて観ていてもらうんです。それで「イってないねぇ〜」と言われたら、ストリングの反発性能が低下していると考えるのが、合理的です。

もしそんな相手がいない場合は、新品と比較するしかありません。ラケットが2本あれば、1本を新品に張り替えて、張り替えてないのと打ち比べてみましょう。それまでのストリングがいかに飛ばなくなっていたか実感できるでしょう。

ストリングの反発性能というのは、時間とともにどんどん低下します。たとえ使っていなくても、フレームに張られているだけで低下してしまうんです。それを「感じようとする」のではなく、「客観的に判断」することです。フレッシュなストリングに張り替えるだけで、あなた本来の力が発揮されますよ!

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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