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シンセティックストリングは「素材」「構造」で大別

【ナイロンとポリエステル、それぞれ誕生の経緯とは】

さて今回は「シンセティックストリングの素材と内部構造」に焦点を絞ってお話しします。

ひとくちに「シンセティックストリング」といっても、さまざまな種類があり、
いくつかのグループに分けられます。

まず「素材的に2分化」され、従来からこの分野を担ってきた「ポリアミド素材」と、
新興著しい「ポリエステル素材」があります。

ポリアミドは、デュポン社が商標を持っている「ナイロン」があまりに有名で代名詞となってしまったため、
今日では「ナイロンストリング」のほうが通りがいいですが、
正式には「ポリアミド」でも「ポリエステル」と混同しにくいように、
ここでは「ナイロン」の呼び名を使うことにします。

「ナイロン」は、ナチュラルガットの代替素材として使われ始めて歴史が古く、
いろんなものが作られてきて、性能向上と個性演出のために、多彩な構造を与えられてきました。

同じナイロンでも派生種類によって、その打球性能は多岐に渡りますが、
総じて「適度な柔軟性と伸縮性を持つ」のが特徴です(対ポリエステルでの話ですが)。

ナイロンにも多くの種類が開発され、それぞれに素材的個性があります。
ただ打球結果には、素材的個性の差よりも、構造による個性差のほうが大きく、
これをコントロールすることで「性能差」を生み出す方向で進化してきました。
構造的に大きく分けると、「モノフィラメント」と「マルチフィラメント」という2種のタイプがあります。

対して「ポリエステル」は物性的に硬く、とても大きな力を加えないと、伸縮性を引き出すことができません。
そのぶん安定していますから、広く多くの工業製品に使われるプラスティック素材です。

テニス用ストリングとして出現したのは、およそ35年前。
当初は「ナイロンだとあまりに頻繁に切ってしまうプレイヤーのため」だけに販売された格安ストリングでしたが、
「切れない」という点では、【ケブラー】などのアラミド繊維がありましたから、
長い間、忘れ去られていた素材でした。

ところが、2000年代になってラケットの反発性能が飛躍的に向上し、
さらにトッププレイヤーたちのパワー向上に伴って、激烈なインパクトが生まれ、
ナチュラルガットを使っていたトッププロたちは、打球をコート内に収めるのがむずかしくなってきました。

そこに「思い出されたように」現われたのがポリエステル製ストリングで、
むしろその「飛びにくさ」がいいとプロがこぞってナチュラルガットからポリエステルに乗り換えたため、
その影響で世界的に普及したのです。

ですから、ポリエステルは強烈なインパクトの持ち主に向いている存在ということを
頭の片隅に置いていてください。

[画像提供:㈱トアルソン]

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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