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ストリングは細いほうがいいって本当?

太さ選びのポイントは「伸縮性」か「耐久性」か!

よく「ストリングって細いほうがいいんですよね!」と念を押されますが、ひと言で答えるなら……「違います」。
同モデルのストリングで、太い・細いによって、どんな違いがあるのか、きちんと理解されている方は意外に少ないかと思います。

今日のストリング太さの基準は、一般的に「1.30mm」が中央値とされていて、それより太いものを「太ゲージ」、細いものを「細ゲージ」と呼ばれたりします。ただ最近は、1.30mmでも太いほうという認識かもしれません。

まず「細いか、太いか」による違いを簡潔にまとめました。
細い:軽快な打球感・打球がよく飛ぶ・打球感が繊細・スピンがかかりやすい
太い:しっかり手応えのある打球感・敏感すぎない・安定している・耐久性が高い
それぞれの太さに性能的個性があり、どちらが「いい」「悪い」ではありません。
言い方を変えれば、細いストリングは「軽快に飛ぶけれども、切れやすい」ですし、太ければ「切れにくいけれども、打感が重い」ということにもなります。

これらの性能的な差異は、おもに「伸縮性」の違いによるものです。
細いストリングは太いものよりも、インパクトで「伸縮しやすい」性質があります。伸縮性が高いということは、「反発性能の高さ」に直結します。
細いほうがよく飛ぶ……と言われるのは、この伸縮性のおかげです。

また細いストリングは、太いものに比べて「スピンがかかりやすい」とも言われています。概してそうでしょうが、ただその理由について、多くの方が誤解しています。
「細いほうがボールに食い込んで引っ掛かるからね」という説明に、「ふぅ〜ん、そっかぁ!」と納得していませんか?

1.30mmと1.25mmの太さの差は「わずか0.05mm」(日本人の髪の毛の平均的太さが 0.08mm)です。この違いが、あのモジャモジャのフェルトへの食い込み方に、どれくらいの違いを生むというのでしょう?
そんな微細な差よりも、スピン性能に対してはるかに大きな影響を持つのが……
太さの違いによる「伸縮性の差」なのです。

「細いほうがストリングの伸縮性が高い → スピンがかかりやすくなる」。
インパクトの瞬間に、縦糸がズレて、それが元に戻るときにスピンを与える「スナップバック」という現象が起きやすい条件としては、「縦糸が横ズレすることで伸び、それが縮むことで元に戻って、ボールを持ち上げて回転を加速する」ことです。この機能が発揮されやすくなる補助機能として「ストリングが交差点で滑りやすい」ことが加えられます。

「滑りやすさ」がメインではないと思います。縦糸がいくら横ズレしても、それが俊敏に元に戻ろうとしてくれなければ、効果的なスピンは生まれにくいのです。スピンに大切なのはストリングの「伸縮性」というわけです。

「それじゃぁ、やっぱり太いよりも細いほうがいいじゃん!」と思うかもしれませんが、
単純にそういうわけではありませんよ。
細いストリングはインパクトでの反応が「繊細で敏感」……をメリットと捉えがちですが、パワーヒッターにとっては、現代のよく飛ぶラケット+細いストリングは「敏感すぎる」ということになります。

それがポリエステル系ストリングを選ばせるわけですが、ポリにしてみたら「ポリは飛ばないから細くする」って。「飛ばしたくない→ポリ選択→もっと飛んで→細いポリ」って、何やってるんでしょう?

飛びすぎを感じた場合は、違うモデルに変更する前に、「まず同じモデルで、ちょっと太いものに変更してみる」ことで調整してみてはいかがでしょう。ガラッと変えるのは、それを試してからでいいじゃないですか。

細いストリングは飛び性能やスピン性能がいい反面、「切れやすい」という宿命を抱えています。太いストリングは、細いものよりも伸縮性が敏感でなく、かつ切れにくいメリットがあるので、ハードヒッターには向いています。
いいことがあれば、悪いこともある……それがストリング太さの選択なのです。

[画像提供:株式会社ダンロップスポーツマーケティング]

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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