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2種類の「構造」、モノとマルチのお話

ナイロン系 モノフィラメントとマルチフィラメントの違い

シンセティックストリングには大別して3つの内部構造があります。

まずナイロン系モノフィラメントと、同じくナイロン系のマルチフィラメント。
そしてポリエステル系モノフィラメントは、構造としては「単一モノフィラメント」なんですが、
ナイロン系のそれとはまるで違っていますので「3つに大別」としました。

まずナチュラルガットの代替品として生まれたのは「モノフィラメント構造」で、
最初は釣り糸のような単一繊維(現在のポリエステル系ストリングはこのタイプ)でしたが、
傷がつくと切れやすいために、それを保護するために、外側に細い糸を巻き付けるようになりました。
メインの太い糸を「芯糸」、それを覆うように巻き付けられる細い糸を「側糸(レイヤー)」と呼んでいます。

モノフィラメント構造では、「伸縮性のカギ」を、太い芯糸が握っています。
初めは芯糸を傷から守るために巻かれた側糸でしたが、
しだいに打球感にマイルドさを与えるためにも工夫されるようになります。
素材、太さ、巻き付け方、一重巻き・二重巻きなど、いろんなバリエーションが生まれ、
それぞれに打球性能や耐久性能が違います。

対して「マルチフィラメント構造」は、
中央に存在する「芯糸自体」を、複数の細い繊維を束ねて構成してあります。
側糸と同じくらいの太さのフィラメントをまとめたものもあれば、
さらに細い極細繊維を1000本〜2000本以上も束ねたものもあるのです。

一般的には、使用されるフィラメントが細いほどマイルドな打球感となり、太いほど耐久性が高く、
ハッキリした打球感になると言われていますね。
また、束ねただけのマルチ芯糸と、束ねてから樹脂でまとめているタイプがあり、
樹脂を使っていないほうが打球感は柔らかくなりますが、性能寿命は短くなりがちです。

また、それに使う樹脂の種類によっても、打球性能・打球感は違ってきますので、なかなかに奥の深い分野です。
マルチフィラメントが1980年代初期に登場した頃は、芯糸全体が極細マルチフィラメントの束で、
それを側糸で巻くスタイルが中心でしたが、その後、マルチフィラメントの中に、
やや太いモノフィラメントを仕込んで打球感をはっきりさせたり(これをモノマルチと呼んだりします)、
マルチフィラメントの小束をいくつか作ってから、それらをまとめて構成することで耐久性を向上させたりと、
いろんな内部構造が生み出されるようになりました。

さらには数種類の素材を組み合わせたマルチフィラメントも登場し、
ポリエステル大全盛の今日でも、その進化は続いています。

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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