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モノとマルチの「打球性能」の違いって?

俊敏さならモノ、マイルドさはマルチ

今回はナイロン系ストリングの話。
ナイロン系には構造的に違う「モノフィラメント」と「マルチフィラメント」の2種類がありますが、
その構造的な違いは、打球性能の違いとしてどのように反映するのでしょう?

たまに「ナイロンガットなんて、どれも同じようなものさ」なんて訳知り顔で言う人がいますが、
だいたい「ガット」と言うこと自体がちょっとねぇ。

まぁしょうがないか……、
それぞれの違いが「打球性能という結果」にコミットしていなければ(古っ…笑)、
ストリングの多彩なバリエーションが存在する意味がありませんよね。
同じなわけない……その人が鈍感すぎるだけ。

シンセティックストリングとして老舗株のナイロンモノですが、
太い芯糸が打球性能の大きな部分を握っていて、
俊敏なフィーリングで反発感が高く、球離れも速い印象が特徴です。

インパクト時には適度な手応えがあり、インパクトの情報を
シンプル・ダイレクト・クリアに伝えてくれる特徴があります。
多彩なバリエーションがありますが、ポリモノ系に押されている昨今では、
各性能にバランスがとれているものが残っているという感じです。

ナイロンモノは内部の芯糸が太いため、切れにくさの強度は高いですが、
頼りの芯糸がインパクトの負担に耐えきれなくなると、一気に「ガンッ」と破断します。

いっぽうナイロンマルチは、束になった極細繊維それぞれが、伸縮性と耐久性を負担し合うため、
内部で少しのフィラメントが切れても、他のフィラメントが耐えられるので、ナイロンモノのように、
突然切れるということは、やや少なく、打球による摩耗、内部破断の進行、によって
それぞれのフィラメントの負担も大きくなって、ついには切れるという感じです。

打球性能としては、モノフィラメントに比べて非常にマイルドで、
インパクトの衝撃を緩和してくれるため、高反発系フレームを使うプレイヤーの愛好者が多い傾向があります。

またボールとの接触時間を長く感じさせる傾向があり、「ホールド感が高い」として、
よりコントロールを重視する方に愛用されることも多いですね。

また、モノフィラメントとマルチフィラメント、それぞれが持つ特徴を組み合わせようと、
マルチフィラメントの中に太めの芯糸を仕込んだり、
やや細めのモノフィラメントを数本組み合わせてマルチ化するといった構造も生み出され、
それら中間的な構造を総称して「モノマルチ構造」と呼ばれています。

ただし、かならずモノかマルチかのどちらかに性能的には寄っているので、
パッケージの構造図などを参考にしつつも、詳しいストリンガーに相談して判断することを薦めます。

もちろん、JRSA認定ストリンガーならば安心です!

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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