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グリップテープ秘話三部作 〜その1 誕生と変遷

グリップテープの誕生から「白ウェット」登場まで

テニス歴の長いベテランプレーヤーの方はみんな「グリップテープ」と言っていましたよね。
でも最近は「グリップテープ」と呼ばずに「オーバーグリップ」と呼ばれることが多くあります。
どうしてかご存知ですか?

昔のグリップはみんな「天然皮革」が巻かれていて、その天然皮革のことを「グリップレザー」といいました。
天然皮革のグリップは、「汗を吸って乾く
& 汗を吸って乾く」を繰り返すうちに
カチコチに硬くなり、ツルツル滑るようになります。

13th June 1979: Vitas Gerulaitis of the USA after being beaten by Tom Gullikson at the Queen’s Club. (Photo by Frank Tewkesbury/Evening Standard/Getty Images)

それをカバーするために誕生したのが「グリップテープ」でした。
いちばん最初は、ビタス・ゲルレイティスという選手が使っていた
「包帯タイプ」でしょう。
彼はチェンジサイドのたびにベンチで包帯素材のテープを巻き替えていました。

その次に生まれたのが「紙タイプテープ」です。
紙というか「薄く透き通ったメッシュ型不織布」ですね。
これにちょっとだけ粘着性のある液を沁み込ませて、
手のひらの滑りを防止するというもの……でしたが、
手のひらがベトベトして汚れ感が強いために、すぐに消えてしまいます。

そしてついに登場したのが、みなさんご存知! 永遠のドライタイプ、
今日でも愛用者の多い【トーナグリップ】です。
火が着いたのはトッププロたちからで、雑誌を見た若者は「あの青紫のテープは何だっ?」ってことで話題になり、
すぐに輸入されて日本でも大ヒット。

強さをアピールしたい若者は、自慢げに【トーナグリップ】を巻いていました。
本当は「いつもきれいな【トーナグリップ】を見せたいのですが、
学生ってのはカッコつけたいくせに貧乏なので、そうそう簡単に使い捨てたりできません。

今考えれば汚い話ですが、表面がボロボロになるまで使い倒し、
どうしようもなくなったら巻きを外して、裏返して逆さから巻くと、
もうちょっとだけ使える……ような気がしてました。
【トーナグリップ】の場合は、表と裏がちょっと似ていましたから(汗)。

その後、ドライに対抗して発売されたのが「ウェットタイプ」のペタペタする感触のヤツ。
使い始めこそ表面はキラキラ光っていて、ペタペタ感があってグリップ性能は高いのですが、その感触は最初だけ。
あっという間に表面のウレタンはしっとり感を失い、ツルツル感は消え去って、グリップ性能もガクンと低下してしまいました。
バサバサになると、「汚れやすく」なりますしね……。

おっと、第1部はここまでで、明日掲載の第2部をご覧ください。

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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