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サービスガット(ストリング)の甘い誘い?

電気製品購入時に付いてくる「お試し用電池」みたいなもの

みなさんは新しくラケットを購入したとき、店員さんから「サービスガットでいいですか?」と言われた経験ってありますよね? まぁ「ガット」というのは「ナチュラルガット」だけを指している言葉で、JRSAでは世界的に通用する「ストリング」と呼んでいますけど……

問題はそっちじゃなくて「サービス」ってほうです。筆者の過去の経験から言うと、「ラケットを買ってくれるなら、オマケで付けちゃうけど」というストリングの多くは、非常に安いノーブランド品だったり、なにか事情のあるストリングであることが多かったです。正規の商品は、きちんと値札が付いているわけで、「それをタダにしてくれる」というわけではないんですよ。

ごく稀に「当店でラケットを購入いただいた方には、ブランド正規品を無料サービス」というお店もあって、ずいぶん気前がいいなと思いますが、ほとんどの例がノーブランドのストリングでしょう。

それが『いけない!』というわけではないんです。買う側が、きちんとそれとわかって張ってもらうのならいいのです。ただ、徹底的に自由に選べる正規商品のようにはいかないってことは、ちゃんとわかって張ってもらいましょう。

こんなふうに考えてはどうでしょう。
「電気小物を買ったときに付いてくる電池」って。とりあえずすぐに使えるけど、但し書きには「この電池はお試し用であって正規商品ではありません。一般販売している電池よりも寿命は短いです」とあります。いわゆる「サービスガット」って、この電池と同じと考えてみては?

「タダ」って言われると「じゃぁ!」って思っちゃうのは人情ですよね。でも「ホントに張ってもらいたいのは別にあるんだよね」って人は多いんじゃないですか? それがうまく「いい感じ!」であれば万々歳ですけど、「なんだかなぁ〜」では、せっかく期待して買ったラケットフレームまで悪く感じられちゃうじゃないですか。こりゃぁもう「とばっちり」ですよ!

「最初は無難なヤツで試して……」って思っちゃうかもしれませんが、最初のヤツが、ちゃんと『基準』になってくれるならいいんですよ。店頭に並んでいるほとんどすべてのストリングのパッケージには「特徴・個性・メリット」などが記されていて、「その立ち位置」がわかるため、「次の選択のベース」になってくれます。

数万円のラケットフレームを買うわけですから、最初から「めっちゃいい感じ! 大満足」を目指してみてはどうでしょう。自分のプレイスタイルにマッチしてると考えて選んだフレームに、その性能を最大限に活かしてくれるストリングを選んであげましょう。そのためには「最初だから何でもいいや」ではないと思うんです。

費用的な条件があれば、それをはっきりストリンガーに伝えましょう。その範囲内で、ベストなアドバイスをしてくれるはずです。それがプロフェッショナル・ストリンガーです。筆者の知る店では、最初に張るストリングを選択できるようになっていて、「これとこれはサービスで無料。あれとそれはプラス◯◯円」というように、サービス額の基準を持っているケースもありました。これはとても明解で親切なやり方だと感心させられました。

巷にはいろんなショップがあります。なかには「初回、張り代もサービス!」なんて大盤振る舞いするところもあるでしょうが、ちゃんとした技術料が「タダ」ってことありますかね? 普通に考えちゃうと、「精魂込めて張ってくれる」とは思いにくいですよね。ちゃんとしたものには、ちゃんとした対価があって然るべきであり、逆に「タダ」にはそれなりの理由があるって思うんです。

もしもその「サービスガット」を、ものすごく気に入ってしまったら、次に張り替えるとき、いくら請求されるんだろう??? って思うのは、ちょっと意地悪すぎるかなぁ?

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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