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「グロメット」ってどうしてあるの?

「グロメット交換」はクルマの「タイヤ交換」と同じだよ

若い人には「化石」のように思えるかもしれませんが、今から40年ほど前まで、テニスラケットはウッド(木製)の時代……みんなが化石でプレイしていました。
フレームは薄い板を何枚も重ね合わせた「合板」で構成され、そこに孔が開けられて、ストリングは直接に木のフレームと接していたのです。

でも現代のカーボン製ラケットには、フレームとストリングの間に「グロメット」という存在が欠かせません。カーボン製フレームに孔をあけると、角が鋭角になって、ストリングを傷付け、すぐに断ち切ってしまいます。その「孔の角」をカバーし、ストリングがフレームの孔に直接に接しないようにしているのが「グロメット」なのです。

カーボン製フレーム登場当時は、グロメットの一つ一つが「単独ピン」で、孔に1個ずつ、または2個連結したものが挿し込まれていましたが、その後、単独グロメットは同じ樹脂で繋がれて「連続グロメット」となり、これが現代まで続いているのです。

グロメットは、やや柔らかい樹脂で作られており、それがフレームとストリングとの間のクッションとして機能します。もしも「グロメットなし」で張れたとしても、その打球感はきわめてダイレクトで硬く、ストリングからの衝撃も伝わりやすくなってしまいます。かつて「グロメットレス」のラケットもありましたが、まだカーボンが進化していない時代では「そのダイレクト感がいい!」と評価されましたが、現代的な高剛性カーボンのフレームには、やはり「グロメットあり」のほうが、マイルドで愛される傾向にあります。

さて、その大切さのお話です。筒状のグロメットは、フレームの孔を突き抜けて、その先端がフレーム内側へ飛び出し、ストリングがフレームに直接に接しないように守ってくれますが、使用しているうちに「割れ」たり「折れ」たり、「なくなっちゃった」りします。そうなると、ストリングがフレーム孔の角に直接当たることになり、ストリングに傷を付けて、切れやすくなってしまいます。

それって、クルマで言えば「パンク」であり、ひどければ「タイヤが外れちゃった」のと同じですよ。そうなる前にグロメットを新しいものに交換しなければなりません。優秀なストリンガーならば、傷付いたグロメットが1〜2カ所は「チューブを通す」ことや「部分的に単独グロメットに差し換え」することで緊急措置できますが、それはあくまで「緊急措置」。

ユーザーとしては「壊れているのはたった1カ所なのに、まるごと交換かよ!」と言いたくなる気持ちはわかりますけど、安心プレイのために、思い切って交換してもらいましょう。何度も緊急措置で張り替えてもらうのは「いつパンクするかわからないタイヤで走り続ける」のといっしょです。もしも大切な試合の途中でストリングが突然切れたら、フル交換しなかった自分の責任です。
悪いことは言いません…… プロのアドバイスは聞いておくのがいいですよ。

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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