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ストリングのこと、
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張り替えは「ストリングの世代交代」だ

前回は、「ボールの変形→復元による弾力」と、「ストリングの伸び→縮みによる面弾力」との二つがあるから、
テニスボールは楽に飛んでくれて楽しいんだよ!
という話をしました。
この二つが、いつまでも変わらなければ、ずっと楽しいままなんですが、悲しいかな、そうはいきません。

ストリングも消耗品

ボールの弾力性をメインで支える「内圧ガス」は、
たとえまったく打たなくても時間とともに徐々に抜けていきます。
ボールの中のガスが抜けると弾力が低下し、新品の頃のようには飛ばなくなってしまうのです。
テニスボールの機能低下は手で握っても明らかですよね。
だから消耗品として、みなさん新しいものに買い替えます。

でもストリングの機能低下(伸縮性の低下)には、なかなか気付きません。
スウィングとボールのおかげで、ボールはそれなりに飛んでいくからですが、
すべてのストリングの伸縮性は「張られているだけで」時間経過とともに確実に低下します。
もちろん打球回数が増えれば増えるほど、その低下は早くなります。

ストリングが弛みにくいことを「テンションメンテナンスがいい」と言いますが、
テンションが下がらなければ、伸縮性が保たれているというわけではありません。
いろいろな機器によって測ることができるのは「静的テンション」で、
ボールを飛ばすのに必要なのはストリングの「動的伸縮性」なのです。

ポリエステル製ストリングなどは、「動的伸縮性」の持続時間がとても短く、張ったばかりの飛び性能を、
1カ月後、同様に期待することはできません。
だからプロプレイヤーは、
ほぼ1セットごとに新しいラケットに交換するのです。
あれは「ラケットを替えている」のではなく
「ストリングを替えている」のです。
彼らの強烈なインパクトでは、
わずか1セットでストリングの寿命を使い切ってしまいます。

ストリングは「張ってあれば、いつまでも使える」ものではありません。
目には見えなくても、その性能寿命はどんどん費やされ、最後には「張られたまま寿命を終えている」のです。
あなたがもし「なんだか最近、ボールの飛びが悪くなったな」と感じたら、
あなたのストリングは「すでに死んでいる」と思ってください。

だからストリングを張り替えてあげなければなりません。
ストリングの張り替えは、「ストリングの世代交代」なのです。

[画像提供:Tecnifibre SA]

筆者
松尾高司(KAI project)
1960年生まれ。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。

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